オルヴィエート/ウンブリア/イタリア
Orviet/Umbria/ITALIA
Orviet/Umbria/ITALIA
前々回の記事で、「オルヴィエートの町は丘の上にある」と書いたが、ヴィジュアルで見ると こんな感じ(↑写真参照)。
まるで ちょっと薄手のホールケーキ。
よく見れば、あの美しいカテドラルも中央右手に見え、町全体が 建物を飾りにしたデコレーションケーキみたいだ。
丘に登るためにケーブルカー(Funicolare)を使うと記したが、その乗り場は、上の写真で見えている町のちょうど反対側、鉄道駅のすぐ前にある。(↓写真参照)
オルヴィエートの駅前すぐにある「ケーブルカー乗り場」 |
ず―っと前、オルヴィエートの町でレンタカーを借り、その後の旅を続ける計画を立てていたことがあった。
その際、フィレンツェからだったか、ローマからだったか忘れたが、鉄道でオルヴィエートへ向かったものの、電車が遅れ、予約していた車の借り出し時刻より1時間ほど遅れて到着した。
駅から少し離れた場所にある レンタカー屋さんへ行くと、事務所の扉の前で、2人の男性が手に息を吹きかけながら佇んでいて、ガラス越しに事務所を覗き込んでは何やら話している。
「どうしたのですか?」私は訊ねた。
「閉まってるんだ」そう応えた背の高い男性は、呆れ顔で肩をすくめる。
「え?」私はガラス越しに、灯りの消えたレンタカー事務所を覗き込んだ。「なんで?」
しばらくして、男性たちは大きなバッグを抱え駅の方へと戻って行った。
事務所の内と外を隔てるガラスに、曇り空からチラホラと落ちてくる雪片が映っている。
どうしよう・・・。
確かに電車遅れのために、私の到着は遅れた。
でも、予約はきっちりしてある。
なのに、事務所は閉まっている。誰もいない。。。
うむ~こんなことがあるの? どうしたらいいの? しかも寒い。 このまま借りられないの? どこかへ連絡しなくちゃいけないの? それとも・・・。自問自答が続く。
寒さの中の温かさ、可笑しさ
「彼女たち、さっき出て行ったわよ。買い物じゃないかしら」
小さな犬を抱っこしたスィニョーラ(おばちゃん)が何処からともなく現れ、私にそう言った。
「買い物?!」
「さっき車で出て行ったもの。きっとアウトレットモールね」
「アウトレット・・・。そ、そうですか・・・」スーツケースを傍らに呆然と佇む私。
スィニョーラは抱っこしていた犬を地面に降ろし、見知らぬ私に対して、ごく当たり前のように言った。
「そのうち戻って来るでしょ。しばらくウチで待つといいわ」
そう言われたものの私の不安はぬぐえない。
もしこのまま車を借りることができなかったら、この先いったいどうすればよいのだろう。
そんなことを考えながら彼女についてゆくと、小さなお店の中からワンコが2匹飛び出してきた。
ワッサワッサと大歓迎である。
そのお店は、電化製品から洗剤などの日用品までを扱う小さな雑貨屋さんだった。
不安を抱えたまま犬たちと戯れ 30分ほど過ぎたころだろうか、スィニョーラが笑顔で言った。「ほら、戻って来たみたいよ。彼女たち」
私は礼を言って、レンタカー事務所へ急いだ。背中で犬たちがワンワン吠える。
急ぐ必要などないのだろうが、なぜか気持ちが焦っている。
事務所前の駐車スペースに停まった車からスタッフらしき若い女性が2人、アウトレットモールで買い物をしたとわかる 赤いショッピングバッグを携えて降りて来た。
美しい笑顔で「Ciao!」と、客だとわかる私に明るく言って、事務所の扉の鍵を開け中に入る。
申し訳なさそうな素振りなど全く、全~くない。Niente ‼
事務所の灯りが点く。
その後、何事もなかったように手続きが進められ、私は車を借りた。
困っている私に声をかけてくれたスィニョーラのやさしさ。
あたふたせず、「待っていればいい」という楽天的なその調子。
予約客が来ないからと、買い物に出かけてしまうスタッフの自由さ。(おそらく、どれくらい鉄道が遅れているか、情報が入っていたんでしょうね。)
レンタルした車の運転席に座り、その時になって初めて 体中に纏わりついている大量の犬の毛に気がついた自分に 可笑しさを感じながら、「イタリアって面白い!」と、ニヤニヤしてしまった 旅の始まりだった。
<追記:地方でのレンタカー事情>
地方にあるレンタカー屋さんの事務所には、予約が入った時にだけ対応するところが多くあります。(イタリアやフランスのことしかわかりませんが・・・)
当時の私は、どの店舗も日本と同じようにずっとオープンしているものと思いこんでおり、とても焦りました。
今でこそだいぶ慣れましたが、時には閉まっている車の修理工場や、駅の閉鎖された事務室みたいなところで手続きをしたこともあります。
普段はそこに人がいないので、予約時間より早く到着すると、レンタカー事務所がどこにあるかわからず困惑してしまうことが結構あるのです。
また、対応してくださる方も、レンタカー専任のスタッフではなく、駅の事務員さんや、インフォメーション・スタッフ、工場のおばちゃん、ガソリン・スタンドのおっちゃんと様々。利用客がそれほど多くない地域では、その方が効率が良いということなのでしょうね。(もちろん専任スタッフが常駐し、キッチリやっているところもあります。)
【行き方】
・ローマから鉄道でおよそ1時間~1時間30分
・フィレンツェから鉄道でおよそ1時間30分~2時間30分
・オルヴィエート鉄道駅からは、駅の目の前にあるケーブルカー、もしくはバスを利用して町へ上がります。
【主な見どころ】
・Duomo di Orvieto (オルヴィエート大聖堂)
・Chiesa San Giovenale (サン・ジォヴェナーレ教会)
・Pozzo di San Patrizio (サン・パトリツィオの井戸)
・Torre del Moro (モーロの塔)
・Centro Storico (旧市街全体)
【参考サイト】
・Comune di Orvieto (オルヴィエート・コムーネのサイト)
・TRAINITALIA (イタリア鉄道)