2018-08-21

サリー=ド=ベアルン? それとも、サリー=ド=ベアン? 【フランス旅】

フランスバスクにある塩の街「サリー=ド=ベアン」の中心地。サレイ川沿いに古く美しい家並みが残っている。

サリー=ド=ベアン/ヌーヴェル=アキテーヌ/フランス
Salies-de-Béarn/Nouvelle-Aquitaine/FRANCE


 町の中心を小さな川、サレイ川(Le Saleys)が流れている。

川の北岸、ジャンヌ・ダルブレ広場(Place Jeanne d'Albret)と、南岸、トロンプ広場 (Place de la Trompe)を繋ぐ橋の周辺から、河沿いの街並みを眺めるのがいい(冒頭写真参照)。

往時を彷彿させる古く美しい建物が連なって見え、とても趣がある。

トロンプ広場の更に南に、町の中心、バヤア広場(Place du Bayaa)がある。
様々な業態のお店やカフェが集まり、観光案内所があり、役場(Mairie)もここにある。
前回記事にも書いた、イノシシの泉もこの広場の片隅に、目立たず存在する。

お昼時、広場辺りのカフェやレストランは観光客らしき人たちで混み合う。
しかし、裏通りに入っていくと、雰囲気の良さそうな小さなレストランが路地にテーブルを出し、地元客らしき人たちが、のんびり食事を楽しんでいる。

テーブル脇のクーラーに入ったロゼワインが、とても美味しそうだ。


ガスコーニュ地方、サリー=ド=ベアンの路地裏レストラン。ベアルン・ワインが名物。

「ベアルン・ワイン」はこの辺りのワインだが・・・


ところで、日本で「ベアルン・ワイン」と呼ばれるワインがあるらしい。
私は詳しくはないが、短い熟成期間で飲むのが特徴の一つらしく、特にロゼが有名なのだとか。

この「ベアルン・ワイン」の「ベアルン」という言葉だが、アルファベの綴りで示せば「Béarn」である。
つまり、この辺りで生産されるワインのことだ。

で、この「Béarn」。「ベアルン・ワイン」という表記が定着しているように、日本語では、確かに「ベアルン」と読んでしまいそうになる。

しかし、より音に忠実にカタカナ表記しようとすると「ベアン」である。
聞きようによっては「ベア」と「ン」の間に小さく「ハ」の音が入り、「ベアム」のように聞こえるかもしれない。
詳細に記すとすれば、「ベア r ン」だろうか。

フランス語の「r」は口を半開きにして、上あごの辺りで空気を漏らし、ローマ字「h」を音にしたような感じの音だ。
汚い話だが、道端で痰を吐くオッサンが「カーッ、ペッ!」とやるときの「カーッ」の音をとても弱~くしたような音。

この「r」は日本語に無い音であり、カタカナを当てることができない。
それなのに、色々なところで「r」が、普通に「ラリルレロ」で表記されている。

これについて私は、ちょっと考えた方がいいんじゃないかなぁと思っている。
古い体験があるからだ。

フランスへ行きはじめたころ、ガイドブックなどに書かれていたカタカナ表記をあてに、「メルシー(ありがとう)」とか「オルボワール(さようなら)」などと言ってみるが全く通じない。
相手のフランス人に、「ん?」と怪訝そうな顔をされてしまい、自信も喪失、話す勇気が無くなってしまう。

これでは旅は面白くない。
込み入った会話はできなくても、簡単な挨拶くらいは笑顔で交わしたいものだ。

「メルシー」では通じないが、「メッスィ」は通じる。(メrスィ)
「オルボワール」は通じないが、「オーヴォヮ」は通じる。(オrヴォヮr)
といった感じだ。

バスク地方にある街「サリー=ド=ベアン」のカトリック教会で行われる洗礼式は、ほのぼのとした雰囲気。

ぶつくさ言ってしまったが、町の教会で、洗礼式らしき儀式を見せていただいた。
主役の赤ちゃんの可愛らしさと、皆さんの笑顔を眺めていると、ベアルンでもベアンでも、まぁどっちでもいいじゃないのって、そんな気分になった。



【 行き方 】
・SNCFオルテス(Orthez)駅前から、サン・パレ(Saint-Palais)行きのバスに乗り、およそ35分。
・ポー・ピレネー空港(Aéroport Pau Pyrénées)から、レンタカーで約45分(約60㎞)

【主な見どころ】
・Musée du Sel et des traditions Béarnaises (塩の博物館)
・Vue du Saleys au centre-ville (サレイ川沿いの町の眺め)
・Thermes de Salies-de-Béarn (テルメ・ド・サリー=ド=ベアン)

【 参考サイト 】
Office de Tourisme (Béarn des Gaves)
テルメ・ド・サリー=ド=ベアン (Thermes de Salies-de-Béarn)

2018-08-11

サリー=ド=ベアン。その名の由来は、町の成り立ち、発展と関係していた。 【フランス旅】

ガスコーニュ地方にある塩の町「サリー=ド=ベアン」の楽し気な商店街

サリー=ド=ベアン/ヌーヴェル=アキテーヌ/フランス
Salies-de-Béarn/Nouvelle-Aquitaine/FRANCE


前回、前々回の記事で、バスク地方の小さな町、ソヴテール=ド=ベアン(Sauveterre-de-Béarn)のことを書いた。

記事の中で、この地域には、かつて「ベアン(Béarn)」という名の州があり、そのため、〇〇=ド=ベアン(〇〇-de-Béarn)という名の町がいくつも存在すると。

今回はその「ベアン(Béarn)」の名を持つ町をもう一つ紹介する。
ソヴテール=ド=ベアン から 10㎞ ほど北に位置する サリー=ド=ベアン だ。

ソヴテール=ド=ベアンと比べると、町は若干大きく、少し賑やか。
レストランやブティックも並んでいて活気があり、観光客もそこそこいる。

他の町でも時々見られるが、カラフルで可愛らしい三角旗が街中に張り巡らされていて、それが ほのぼのとした雰囲気を醸し、路地を歩けば、おのずと楽しい気分になってくる。


フランスバスクにある塩の町「サリー=ド=ベアン」のお土産屋さん。道路に映る三角旗の影がカラフルで楽し気に見える。

町の名前「サリー=ド=ベアン」の「サリー」とは・・・


さて、今回は、町の名前「サリー=ド=ベアン」の頭の部分、「サリーSalies)」に注目してみようと思う。

既にお気づきの方もいると思うが、サリーとは「塩」を語源にした名である。
お給料を意味する「サラリー(Salary:英語)」も、その昔、塩を支給していたことからできた言葉と聞く。

ちなみにフランス語で「塩」は「セル(sel)」、形容詞「塩味の」は「サレ(salé)」。
グルメな方は、「プレ・サレ(Pré-Salé)」(※)なんて料理が頭に浮かぶかもしれませんね。

(※「プレ・サレ」は、モン・サン・ミッシェル周辺など、潮が引いた牧草地に生える草を食べて育った仔羊の肉のことです。自然と塩味がするラム肉として、とても美味だと言われています。)

よく知られている話だが、かつて塩は、調味料としての役割はもとより、食料の保存や加工品の生産にも必要だったことから、大変な高級品だった。

この町は、その貴重な「塩」の生産と共に発展してきた歴史を持つ。

しかし、塩の生産地と聞けば、ペイ・ド・ラ・ロワール(Pays de la Loire)の「ゲランド(Guérande)」や、プロヴァンス(La Provence)のカマルグ(Camargue)など、海沿いの塩田地帯を想像してしまうが、こんな内陸の町で何故「塩」が採れるのか。

伝説では、イノシシ狩りをしていた猟師が、撃ったイノシシを追いかけて行った先で、濃度の高い良質の「塩泉」を発見したのだとか。
イノシシが息絶えたその沼地(泉)の周りに人々が集まり、町が作られていったという。

冒頭写真に写る、商店街入り口看板の左右にイノシシの絵が描かれているのも、その物語から来ているのだろう。
それに、町の中心、バヤー広場(Place du Bayaa)の片隅には、「イノシシの泉」もある。

塩の町として発展してきた「サリー=ド=ベアン」の中心バヤー広場の近くのカフェ。
バヤー広場のすぐ隣、トロンプ広場のカフェ。

ところで・・・
「イノシシの泉」といっても、すぐには 絵が浮かばないに違いない。

銭湯などで、ライオンの口からお湯が出ている図を思い浮かべていただきたい。
あのライオンの頭を、イノシシの頭に挿げ替える。
更に、口から流れ出る水量を、「ドバーッと出てる」から「チョロチョロ出てる」に変更する。
これにて「イノシシの泉」のイメージ出来上がり。

命と引き換えに塩を授けてくれたイノシシ。塩の町「サリー=ド=ベアン」は、そのイノシシを、町のシンボルに掲げている。



【 行き方 】
・SNCFオルテス(Orthez)駅前から、サン・パレ(Saint-Palais)行きのバスに乗り、およそ35分。
・ポー・ピレネー空港(Aéroport Pau Pyrénées)から、レンタカーで約45分(約60㎞)

【主な見どころ】
・Musée du Sel et des traditions Béarnaises (塩の博物館)
・Vue du Saleys au centre-ville (サレイ川沿いの町の眺め)
・Thermes de Salies-de-Béarn (テルメ・ド・サリー=ド=ベアン)

【 参考サイト 】
Office de Tourisme (Béarn des Gaves)
テルメ・ド・サリー=ド=ベアン (Thermes de Salies-de-Béarn)

2018-08-01

そこは天然の城壁だった。バスク地方の小さな町「ソヴテール=ド=ベアン」 【フランス旅】

ソヴテール=ド=ベアンの町の中心に建つサン・タンドレ教会(Eglise Saint-André)

ソヴテール=ド=ベアン/ヌーヴェル=アキテーヌ/フランス
Sauveterre-de-Béarn/Nouvelle-Aquitaine/FRANCE


前回記事に、俯瞰で眺める美しい川と周辺景色の写真を掲載した。
木々の緑も、たゆたう水も、キラキラと美しく涼やかで、酷暑の日本にいると、写真の中に飛び込んで行きたくなると。。。

その写真を撮影した場所が、上の写真に写るサン・タンドレ教会(Eglise Saint-André)のすぐ傍だ。

この一帯は、ソヴテール=ド=ベアンの町の中心で、歴史的建造物のモンレアルの塔(Tour Monréal)や、市庁舎(Hotel de Ville)、数件の小さなカフェやお店などが集まっている。

また、教会の横は見晴らし台になっていて、バスク地域の 長閑で美しい景色を望むことができる。

バスク地方やベアルン地方と呼ばれる地域にある小さな町、ソヴテール=ド=ベアンの市庁舎(Hotel de Ville)

町は 至って小さい。

どの町も、町の中心地などに、 i マークの観光案内所「オフィス・ドゥ・トゥーリズム(Office de Tourisme)」があるのだが、小さい町や村の場合、単独での観光案内所が存在せず、市庁舎や役場がそれを兼ねていることがよくある。

この町もそうだった。

町の地図を貰おうと、可愛らしい一戸建て民家のような市庁舎(Hotel de Ville)に立ち寄った。・・・が、建物に人影はなく、扉は施錠されている。

あ、、、休みだ。
今日が日曜日だということを、すっかり忘れていた。

だが、このように「オフィス・ドゥ・トゥーリズム」の規模が小さい町の場合、概して、広場や駐車場など、観光客が立ち寄りそうな場所に「地図看板」が立てられていることが多い。

案の定、教会脇の広場で、すぐにそれを見つけることができた。
町は、地図を持って歩かなくとも簡単に回ることのできる規模だ。


ソヴテール=ド=ベアンの町の中心辺りにあった地図看板

ポー川(Gave de Pau)の支流、オロロン川(Gave d'Oloron)を見下ろす高台に町はある。
町から川へと降りる斜面に、現在は緩やかな散歩道が敷かれているが、かつてそこは天然の城壁となっていたのだろう。
看板に記された街の地図から、中世のころの城壁跡が見てとれる。

今、この町を歩けば、穏やかで平和な空気が漂っているのに、歴史を遡れば、ここは戦いのため、防衛のための町だったのだ。

景色や建物を見て「美しい」とか「趣がある」などと簡単に言ってしまうが、それは今ここにある平和があってこそ。

それにしても、他に観光客、誰もいないなぁ。。。



【 行き方 】
・SNCFオルテス(Orthez)駅前から、サン・パレ(Saint-Palais)行きのバスに乗り、およそ45分。
・ポー・ピレネー空港(Aéroport Pau Pyrénées)から、レンタカーでおよそ1時間(約70㎞)

【主な見どころ】
・Le Pont de la Légende (伝説の橋)
・Eglise Saint-André (サン・タンドレ教会)
・Tour Monréal (モンレアルの塔)

【 参考サイト 】
Commune de Sauveterre-de-Béarn (ソヴテール=ド=ベアン町)
Les Amis du Vieux Sauveterre (ソヴテール=ド=ベアンの友)
Office de Tourisme (Béarn des Gaves)

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