2018-08-11

サリー=ド=ベアン。その名の由来は、町の成り立ち、発展と関係していた。 【フランス旅】

ガスコーニュ地方にある塩の町「サリー=ド=ベアン」の楽し気な商店街

サリー=ド=ベアン/ヌーヴェル=アキテーヌ/フランス
Salies-de-Béarn/Nouvelle-Aquitaine/FRANCE


前回、前々回の記事で、バスク地方の小さな町、ソヴテール=ド=ベアン(Sauveterre-de-Béarn)のことを書いた。

記事の中で、この地域には、かつて「ベアン(Béarn)」という名の州があり、そのため、〇〇=ド=ベアン(〇〇-de-Béarn)という名の町がいくつも存在すると。

今回はその「ベアン(Béarn)」の名を持つ町をもう一つ紹介する。
ソヴテール=ド=ベアン から 10㎞ ほど北に位置する サリー=ド=ベアン だ。

ソヴテール=ド=ベアンと比べると、町は若干大きく、少し賑やか。
レストランやブティックも並んでいて活気があり、観光客もそこそこいる。

他の町でも時々見られるが、カラフルで可愛らしい三角旗が街中に張り巡らされていて、それが ほのぼのとした雰囲気を醸し、路地を歩けば、おのずと楽しい気分になってくる。


フランスバスクにある塩の町「サリー=ド=ベアン」のお土産屋さん。道路に映る三角旗の影がカラフルで楽し気に見える。

町の名前「サリー=ド=ベアン」の「サリー」とは・・・


さて、今回は、町の名前「サリー=ド=ベアン」の頭の部分、「サリーSalies)」に注目してみようと思う。

既にお気づきの方もいると思うが、サリーとは「塩」を語源にした名である。
お給料を意味する「サラリー(Salary:英語)」も、その昔、塩を支給していたことからできた言葉と聞く。

ちなみにフランス語で「塩」は「セル(sel)」、形容詞「塩味の」は「サレ(salé)」。
グルメな方は、「プレ・サレ(Pré-Salé)」(※)なんて料理が頭に浮かぶかもしれませんね。

(※「プレ・サレ」は、モン・サン・ミッシェル周辺など、潮が引いた牧草地に生える草を食べて育った仔羊の肉のことです。自然と塩味がするラム肉として、とても美味だと言われています。)

よく知られている話だが、かつて塩は、調味料としての役割はもとより、食料の保存や加工品の生産にも必要だったことから、大変な高級品だった。

この町は、その貴重な「塩」の生産と共に発展してきた歴史を持つ。

しかし、塩の生産地と聞けば、ペイ・ド・ラ・ロワール(Pays de la Loire)の「ゲランド(Guérande)」や、プロヴァンス(La Provence)のカマルグ(Camargue)など、海沿いの塩田地帯を想像してしまうが、こんな内陸の町で何故「塩」が採れるのか。

伝説では、イノシシ狩りをしていた猟師が、撃ったイノシシを追いかけて行った先で、濃度の高い良質の「塩泉」を発見したのだとか。
イノシシが息絶えたその沼地(泉)の周りに人々が集まり、町が作られていったという。

冒頭写真に写る、商店街入り口看板の左右にイノシシの絵が描かれているのも、その物語から来ているのだろう。
それに、町の中心、バヤー広場(Place du Bayaa)の片隅には、「イノシシの泉」もある。

塩の町として発展してきた「サリー=ド=ベアン」の中心バヤー広場の近くのカフェ。
バヤー広場のすぐ隣、トロンプ広場のカフェ。

ところで・・・
「イノシシの泉」といっても、すぐには 絵が浮かばないに違いない。

銭湯などで、ライオンの口からお湯が出ている図を思い浮かべていただきたい。
あのライオンの頭を、イノシシの頭に挿げ替える。
更に、口から流れ出る水量を、「ドバーッと出てる」から「チョロチョロ出てる」に変更する。
これにて「イノシシの泉」のイメージ出来上がり。

命と引き換えに塩を授けてくれたイノシシ。塩の町「サリー=ド=ベアン」は、そのイノシシを、町のシンボルに掲げている。



【 行き方 】
・SNCFオルテス(Orthez)駅前から、サン・パレ(Saint-Palais)行きのバスに乗り、およそ35分。
・ポー・ピレネー空港(Aéroport Pau Pyrénées)から、レンタカーで約45分(約60㎞)

【主な見どころ】
・Musée du Sel et des traditions Béarnaises (塩の博物館)
・Vue du Saleys au centre-ville (サレイ川沿いの町の眺め)
・Thermes de Salies-de-Béarn (テルメ・ド・サリー=ド=ベアン)

【 参考サイト 】
Office de Tourisme (Béarn des Gaves)
テルメ・ド・サリー=ド=ベアン (Thermes de Salies-de-Béarn)

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